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1.1 コンパイラの紹介
nAG Fortranコンパイラは世界で最初のFortran 90コンパイラであるnAGWare f90 Compiler をベースとしています。開発に際しての設計目標は次の特徴を有するコンパイラを生み出す ことでした:
- 標準的なFortranをコンパイルしホスト互換のCコードを生成する
- 優れたコンパイル性能と妥当な実行効率
- 優れたエラーチェックとわかりやすいエラーメッセージ
- 標準完全互換のコンパイラ(すべての制限事項は特定する)
- モジュラーな設計
- C言語で記述されたコンパイラ
- 保守性、移植性、再利用可能性
コンパイルはマルチパスで実行されます。これらのパスは保守性を高めるためと コンポーネントの再利用を図るために、別個のものとして維持されています。
- Pass 1:
- 語彙及び構文解析、記号表と抽象構文木の作成。
- Pass 2:
- 意味解析、構文木への注釈の付加と記号表への入力。主だったエラーと制約事項 の検出はこのパス中で行われます。
- Pass 3:
- 構文木の変換によるコード生成。
- Pass 4:
- コード出力、宣言文の生成、及び変換後の構文木を平坦化することによるCソース コードの生成。
- Pass 5:
- ホストOSのCコンパイラを用いたコンパイル。
- Pass 6:
- ホストシステムのリンカーを用いた実行可能コードの生成。Fortran実行時ライブ ラリの組込みも含まれます。
1.1.1 nAGにおける他のFortran関連開発項目
nAGはFortranベースの数値計算ライブラリであるFortranライブラリ、SMPライブラ リ、Parallelライブラリ、Fortran 90ライブラリをリリースしてきました。 これらのライブラリについてはnAGコンパイラやその他のコンパイラを用いた数多くの実装が用意されています。nAGはISO/IEC JTC1/SC22 Working Group 5とINCITS/PL22.3の技術開発委員会に参画することでModern Fortranの開発、標準化を支援してきました。nAGコンパイラ部門のリーダーであるMalcolm Cohenは現在Fortran標準のエディタを務めています。
このようにnAGは事業としてFortranに取り組んでいます。
1.1.2 本マニュアルについて
本マニュアルはnAG Fortranコンパイラについて記述したものです。言語仕様やチュ ートリアルマニュアルではなく、コンパイラの用法や言語の特長的機能について紹 介するものです。コンパイラはISO Fortran 2008プログラミング言語[ISO/IEC 1539-1:2010(E)]を実装 し更にISO Fortran 2018標準[ISO/IEC 1539-1:2018(E)]の多くの機能を含んでいます。